臍帯血バンクサービス市場規模・シェア分析：成長トレンドと予測 (2025年～2030年)
臍帯血バンクサービス市場は、バンクの種類（民間、公的、ハイブリッド）、用途（白血病、遺伝性疾患、免疫不全、その他の用途）、および地域（北米、欧州、アジア太平洋、中東およびアフリカ、南米）によって分類されます。上記のセグメントごとの市場規模は、（百万米ドル）で示されています。
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臍帯血バンキングサービス市場は、予測期間（2025年～2030年）中に年平均成長率（CAGR）11.50%を記録すると予測されています。この市場は、銀行タイプ（民間、公共、ハイブリッド）、用途（白血病、遺伝性疾患、免疫不全、その他の用途）、および地域（北米、欧州、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米）によってセグメント化されています。市場価値は米ドル（USD Million）で示されており、北米が最大の市場であり、アジア太平洋地域が最も急速に成長する市場となる見込みです。市場の集中度は中程度とされています。
市場概要
COVID-19パンデミックの影響
COVID-19パンデミックは、世界の経済に悪影響を及ぼし、臍帯血および血液成分サービスを含む様々な医療サービスを中断させました。臍帯血バンキング分野の主要企業は、新規加入者数の減少と収益の低下を経験しました。例えば、Global Cord Blood Corporationの2022年7月の更新情報によると、パンデミック対策と営業地域での出生数減少により、臍帯血寄付の新規加入者は前年比15.2%減少しました。収益も前年比1.7%減の2億9,720万人民元（4,690万米ドル）となり、新規加入者の減少による処理手数料の低下を保管費用の増加が大きく相殺しました。ウイルス感染拡大への懸念は、垂直感染の証拠が限定的であったにもかかわらず、臍帯血バンキング部門の拡大を妨げ、主要企業の収益減少の主な要因の一つとなりました。しかし、COVID-19患者に対する臍帯血および出産組織の使用を調査するための多数の科学的実験が行われ、これが臍帯血バンキング事業へのCOVID-19の影響を軽減するのに役立ちました。COVID-19ベースの細胞療法に関する臨床試験が承認された後、この分野は急速に勢いを取り戻しました。
市場の推進要因
市場は主に、遺伝性疾患の有病率の増加と、政府による意識向上イニシアチブによって牽引されています。血液および造血器が関与する血液疾患には、サラセミア、鎌状赤血球貧血、白血病、リンパ腫、血友病などが含まれ、その発生率は継続的に増加しています。世界的な白血病症例の増加は、臍帯血細胞の需要を高めています。2022年7月の米国国立心肺血液研究所の更新情報によると、鎌状赤血球症は、体全体に酸素を運ぶタンパク質であるヘモグロビンを損傷する遺伝性の赤血球異常の集合体です。毎年、米国で10万人以上、世界で2,000万人以上がこの疾患に罹患しています。このように、遺伝性疾患の有病率の増加は、予測期間中の市場成長を促進すると予想されます。
さらに、サービスプロバイダーの広範な利用可能性に関する一般市民の意識向上も、世界の臍帯血市場サービスの成長を推進する可能性があります。例えば、2021年7月の更新情報では、米国では7月が「臍帯血啓発月間」と宣言されています。Parent’s Guide to Cord Blood Foundationが後援するこのキャンペーンは、妊婦や一般市民に対し、臍帯血とその中に含まれる貴重な幹細胞を保存することの重要性について意識を高めることを目的としています。このような各国でのキャンペーンの実施は、個人の意識を高め、予測期間を通じて市場成長を促進すると期待されています。
市場プレイヤーの戦略
市場プレイヤーは、市場シェアを拡大するために、製品発売、開発、コラボレーション、パートナーシップ、拡大など、様々な戦略を採用しています。例えば、2021年5月には、CordlifeとSingHealth Duke-NUS Academic Medical Centreが提携を開始しました。この戦略は、同社が幹細胞および血液療法に関連する新技術を開発し、市場シェアを拡大するのに役立つでしょう。
市場の抑制要因
上記の要因により、調査対象市場は調査期間中に大きく成長すると予想されます。しかし、研究対象人口の少なさ、倫理的懸念、および収集と保管プロセスの高コストが、予測期間中の市場成長を抑制する可能性があります。
世界の臍帯血バンキングサービス市場のトレンドと洞察
白血病セグメントが臍帯血バンキングサービス市場で主要な市場シェアを占める見込み
白血病は、体の血液形成組織、特に骨髄とリンパ系に影響を与えるがんの一種です。白血病には様々な種類があり、特定のタイプは子供に多く見られ、他のタイプは主に成人に影響を与えます。このセグメントは、白血病の有病率の増加と研究開発活動の活発化によって牽引されています。
2021年10月に発表された「慢性リンパ性白血病：2022年診断および治療手順の更新」と題された研究によると、慢性リンパ性白血病（CLL）の年齢調整発生率は年間10万人あたり4.9人であり、CLLは最も一般的な白血病の一つとなっています。同情報源によると、診断時の年齢中央値は70歳であり、CLL患者のわずか9.1%が45歳未満です。さらに、GLOBOCAN 2020の統計によると、2020年には世界中で白血病が全年齢の男女で474,519例を占めました。このように、白血病の有病率の増加は、予測期間中の市場成長を促進すると予想されます。
また、研究開発活動の活発化も市場の成長を支える可能性があります。例えば、2022年3月には、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの細胞処理施設の技術者が、進行性白血病患者向けの血液幹細胞移植の準備を行いました。フレッド・ハッチの研究者たちは、米国の様々な癌施設で臨床試験を開始し、HIV感染者および進行性白血病患者を登録しています。
北米が市場を支配し、予測期間中も同様に推移する見込み
北米は、白血病やリンパ腫など、あらゆる年齢層における様々ながんの有病率の上昇により、臍帯血バンキングサービス市場を支配すると予想されています。この地域では、骨髄損傷や免疫系欠陥を持つ患者の数が増加しています。米国における新生児の鎌状赤血球症やダウン症などの遺伝性疾患の増加は、北米市場でかなりの収益シェアを占めています。2021年に米国国立衛生研究所が国立バイオテクノロジー情報センターで発表した報告書によると、鎌状赤血球症（SCD）は多系統疾患であり、米国で最も一般的な遺伝性疾患で、アフリカ系アメリカ人の500人に1人が罹患しています。また、アフリカ系アメリカ人の約12人に1人が常染色体劣性変異を保有しており、毎年約30万人の乳児が鎌状赤血球貧血で生まれています。さらに、米国がん協会の2022年1月の推定によると、2022年には米国で約60,650件の新規白血病症例と24,000人の白血病による死亡があり、急性骨髄性白血病による死亡は約11,450人でした。これらの統計には成人人口の大部分が含まれており、彼らの平均余命を延ばすためには適切な医療処置が必要です。
さらに、様々な研究機関による研究開発活動の活発化も市場の成長を推進する可能性があります。例えば、2021年7月には、ピッツバーグUPMC小児病院の研究者たちが、臍帯血輸血が鎌状赤血球症、サラセミア、ハンター症候群、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー（MLD）、および様々な免疫不全症などの非がん性遺伝性疾患を持つ44人の子供を安全かつ効果的に治療したことを発見しました。これは、これまでのところこの種最大の試験です。
したがって、上記の要因により、北米は予測期間中に成長を遂げると予測されています。
競争環境
臍帯血バンキングサービス市場は中程度の競争度であり、いくつかの主要プレイヤーで構成されています。市場シェアの観点から見ると、少数の主要プレイヤーが現在、臍帯血バンキングサービス市場を支配しています。一部の有力プレイヤーは、合併・買収、地理的拡大などの戦略を実施しています。現在市場を支配している企業には、Global Cord Blood Corporation、CBR Systems Inc.、PerkinElmer Inc. (ViaCord LLC)、Cryo-Cell International、およびCordlife Group Limitedなどがあります。
最近の業界動向
* 2022年3月: Cryo-Cell International, Inc.は、ノースカロライナ州リサーチトライアングル内のリージョナルコマースセンターに位置する新築の56,000平方フィートの施設に関する購入契約を締結したと報告しました。この施設は、新サービス「ExtraVault」の開始により、Cryo-Cellの凍結保存および低温保管事業を拡大すると予想されています。
* 2021年2月: Cryo-Cellはデューク大学とライセンス契約を締結し、自律的な垂直統合型細胞療法企業への転換を開始しました。
このレポートは、「世界の臍帯血バンキングサービス市場」に関する詳細な分析を提供しています。
1. 概要と調査範囲
臍帯血は、出産後に切断された胎盤および臍帯の血管から採取される血液であり、通常、母子にとって安全な方法で収集されます。この臍帯血には、血液を形成する幹細胞が含まれており、遺伝性疾患、白血病やリンパ腫などの血液がん、鎌状赤血球症やウィスコット・アルドリッチ症候群といった骨髄および免疫系の特定の疾患の治療に利用されています。
本レポートは、銀行の種類（民間、公的、ハイブリッド）、用途（白血病、遺伝性疾患、免疫不全、その他の用途）、および地域（北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米）別に市場をセグメント化し、分析しています。主要なグローバル地域にわたる17カ国の市場規模とトレンドをUSD百万単位で提供しています。
2. 市場のダイナミクス
市場の成長を促進する要因としては、遺伝性疾患の負担の増加と、意識向上を目的とした政府の取り組みの強化が挙げられます。
一方、市場の成長を抑制する要因としては、研究対象人口の規模が小さいことや倫理的懸念、そして臍帯血の収集および保管にかかる費用が非常に高額であることが指摘されています。
また、ポーターのファイブフォース分析を通じて、新規参入の脅威、買い手/消費者の交渉力、供給者の交渉力、代替製品の脅威、および競争の激しさといった側面から市場の競争環境を評価しています。
3. 市場セグメンテーション
* 銀行の種類: 民間バンク、公的バンク、ハイブリッドバンクに分類されます。
* 用途: 白血病、遺伝性疾患、免疫不全、その他の用途が含まれます。
* 地域: 北米（米国、カナダ、メキシコ）、ヨーロッパ（ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン、その他のヨーロッパ）、アジア太平洋（中国、日本、インド、オーストラリア、韓国、その他のアジア太平洋）、中東・アフリカ（GCC、南アフリカ、その他の中東・アフリカ）、南米（ブラジル、アルゼンチン、その他の南米）といった主要地域が対象です。
4. 競争環境
市場の主要企業には、Global Cord Blood Corporation、CBR Systems Inc.、PerkinElmer Inc. (ViaCord LLC)、Cryo-Cell International、Cordlife Group Limitedなどが挙げられます。これらの企業の事業概要、財務状況、製品と戦略、最近の動向が分析されています。
5. 主要な調査結果と市場予測
* 臍帯血バンキングサービス市場は、予測期間（2025年から2030年）において年平均成長率（CAGR）11.5%で成長すると予測されています。
* 主要な市場プレーヤーは、Global Cord Blood Corporation、CBR Systems Inc.、PerkinElmer Inc. (ViaCord LLC)、Cryo-Cell International、Cordlife Group Limitedです。
* 最も急速に成長する地域はアジア太平洋であり、予測期間（2025年から2030年）で最高のCAGRを記録すると見込まれています。
* 2025年には、北米が臍帯血バンキングサービス市場において最大の市場シェアを占めると予測されています。
* 本レポートは、2019年から2024年までの過去の市場規模と、2025年から2030年までの市場規模を予測しています。
このレポートは、臍帯血バンキングサービス市場の全体像を把握し、将来の機会とトレンドを理解するための重要な情報を提供しています。
1. はじめに
- 1.1 調査の前提条件と市場の定義
- 1.2 調査範囲
2. 調査方法
3. エグゼクティブサマリー
4. 市場の動向
- 4.1 市場概要
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4.2 市場の推進要因
- 4.2.1 遺伝性疾患の負担の増加
- 4.2.2 意識向上を目的とした政府の取り組みの増加
-
4.3 市場の阻害要因
- 4.3.1 調査対象人口の少なさと倫理的懸念
- 4.3.2 非常に高価な収集および保管手順
-
4.4 ポーターのファイブフォース分析
- 4.4.1 新規参入の脅威
- 4.4.2 買い手/消費者の交渉力
- 4.4.3 供給者の交渉力
- 4.4.4 代替品の脅威
- 4.4.5 競争の激しさ
5. 市場セグメンテーション (市場規模：金額ベース – USD百万)
-
5.1 銀行の種類
- 5.1.1 プライベート
- 5.1.2 パブリック
- 5.1.3 ハイブリッド
-
5.2 用途
- 5.2.1 白血病
- 5.2.2 遺伝性疾患
- 5.2.3 免疫不全
- 5.2.4 その他の用途
-
5.3 地域
- 5.3.1 北米
- 5.3.1.1 米国
- 5.3.1.2 カナダ
- 5.3.1.3 メキシコ
- 5.3.2 ヨーロッパ
- 5.3.2.1 ドイツ
- 5.3.2.2 イギリス
- 5.3.2.3 フランス
- 5.3.2.4 イタリア
- 5.3.2.5 スペイン
- 5.3.2.6 その他のヨーロッパ
- 5.3.3 アジア太平洋
- 5.3.3.1 中国
- 5.3.3.2 日本
- 5.3.3.3 インド
- 5.3.3.4 オーストラリア
- 5.3.3.5 韓国
- 5.3.3.6 その他のアジア太平洋
- 5.3.4 中東およびアフリカ
- 5.3.4.1 GCC
- 5.3.4.2 南アフリカ
- 5.3.4.3 その他の中東およびアフリカ
- 5.3.5 南米
- 5.3.5.1 ブラジル
- 5.3.5.2 アルゼンチン
- 5.3.5.3 その他の南米
6. 競争環境
-
6.1 企業プロフィール
- 6.1.1 グローバル・コードブラッド・コーポレーション
- 6.1.2 CBRシステムズ株式会社
- 6.1.3 パーキンエルマー株式会社 (ViaCord LLC)
- 6.1.4 クライオセル・インターナショナル
- 6.1.5 コードライフ・グループ・リミテッド
- 6.1.6 アルファコードLLC
- 6.1.7 ATCC
- 6.1.8 CSG-BIO
- 6.1.9 カリフォルニア・クライオバンク・ステムセル・サービスLLC
- 6.1.10 コードブラッド財団 (スマートセルズ・インターナショナル)
- 6.1.11 シンガポール・コードブラッドバンク
- 6.1.12 ファミコード
- *リストは網羅的ではありません
7. 市場機会と将来のトレンド
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臍帯血バンクサービスとは、出産時に採取される臍帯血に含まれる造血幹細胞を、将来の医療利用のために採取、処理、検査、そして長期にわたって凍結保存する一連のサービスを指します。臍帯血は、胎盤と赤ちゃんをつなぐ臍帯の中に流れる血液であり、骨髄や末梢血と同様に、血液や免疫細胞を作り出す能力を持つ造血幹細胞が豊富に含まれています。これらの幹細胞は、自己複製能力と多様な細胞への分化能力を持つため、再生医療や難病治療において非常に重要な役割を果たすことが期待されています。
このサービスには大きく分けて二つの種類が存在します。一つは「公的臍帯血バンク」であり、もう一つは「私的臍帯血バンク」です。公的バンクは、提供された臍帯血を不特定多数の患者さんの治療のために無償で提供することを目的としています。白血病や再生不良性貧血などの血液疾患、先天性免疫不全症、先天性代謝異常症といった難病に苦しむ患者さんにとって、適合するドナーが見つからない場合の重要な選択肢となります。公的バンクに保存された臍帯血は、厳格な品質管理と倫理的基準のもとで管理され、全国の医療機関からの要請に応じて提供されます。一方、私的バンクは、出産したご自身の赤ちゃんやそのご家族が将来、病気になった際に利用することを目的として、有償で臍帯血を保存するサービスです。これは、将来の自己利用や家族利用に備える「保険」のような位置づけであり、公的バンクとは異なり、提供された臍帯血が他者に提供されることはありません。
臍帯血の主な用途は、現在、造血幹細胞移植を必要とする様々な疾患の治療です。具体的には、急性・慢性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液がん、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、ファンコニ貧血などの造血不全症、重症複合型免疫不全症などの先天性免疫不全症、ハーラー症候群、副腎白質ジストロフィーなどの先天性代謝異常症、さらには神経芽腫といった一部の固形がんの治療に用いられています。これらの疾患において、臍帯血移植は骨髄移植や末梢血幹細胞移植と同様に、病気の原因となる異常な細胞を排除し、健康な造血幹細胞を移植することで、正常な血液や免疫機能を再構築することを目指します。また、臍帯血は骨髄や末梢血に比べてHLA型（ヒト白血球抗原）の一致度が低くても移植が可能であるという利点があり、特に小児患者や緊急性の高い患者にとって重要な治療選択肢となっています。
関連技術としては、まず「採取技術」が挙げられます。臍帯血は、赤ちゃんが生まれた後、胎盤が娩出される前に、臍帯から非侵襲的に採取されます。この際、母体や赤ちゃんへのリスクはほとんどありません。次に「処理・検査技術」では、採取された臍帯血から造血幹細胞を分離・濃縮し、細胞数や生存率を評価します。また、感染症（HIV、B型肝炎、C型肝炎など）の有無や、公的バンクの場合はHLA型検査も行われます。そして最も重要なのが「保存技術」です。臍帯血は、細胞の機能を維持したまま長期保存するために、液体窒素を用いた超低温凍結保存（-150℃以下）が行われます。これにより、数十年単位での保存が可能となり、必要な時に解凍して利用することができます。移植時には、凍結保存された臍帯血を解凍し、患者さんの体内に輸注することで移植が完了します。
市場背景を見ると、公的臍帯血バンクは、社会貢献としての重要性が広く認識されており、国や自治体からの支援を受けて運営されています。しかし、安定的な運営資金の確保や、より多くのドナーからの提供を促すための啓発活動が常に課題となっています。一方、私的臍帯血バンクは、親御さんの将来への備えというニーズに応える形で市場が拡大してきました。しかし、高額な費用がかかること、そして実際に利用される機会が非常に限定的であること（一般的に数千人に一人程度と言われています）から、その費用対効果や倫理的な側面について議論が続いています。日本国内では、公的バンクは日本赤十字社が中心となって運営されており、私的バンクは複数の民間企業がサービスを提供しています。世界的に見ても、臍帯血バンクサービスは、医療技術の進歩とともにその重要性が増しており、特に再生医療分野での応用への期待が高まっています。
将来展望としては、臍帯血の利用範囲が造血幹細胞移植に留まらず、再生医療分野へと大きく拡大することが期待されています。臍帯血に含まれる幹細胞は、神経細胞、心筋細胞、軟骨細胞など、様々な細胞に分化する能力を持つことが示されており、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害、糖尿病、心筋梗塞、脊髄損傷などの疾患に対する新たな治療法としての臨床研究が進められています。これらの研究が成功すれば、臍帯血の価値は飛躍的に高まるでしょう。また、幹細胞の培養・増殖技術の進歩により、採取量が少ない臍帯血でもより多くの細胞を確保できるようになる可能性や、保存期間のさらなる延長、品質管理の高度化なども期待されます。社会的な側面では、公的バンクの安定的な運営と拡充、そして私的バンクにおける倫理的・法的枠組みの整備と、消費者への適切な情報提供が引き続き重要な課題となります。国際的な連携も深まり、より多くの患者さんに臍帯血治療の恩恵が届くような未来が展望されています。