心膜炎治療薬市場規模・シェア分析 – 成長動向と予測 (2025-2030年)

心膜炎治療薬市場の概要：成長トレンドと予測（2025年～2030年）

はじめに

心膜炎治療薬の世界市場は、2025年から2030年の予測期間において、年平均成長率（CAGR）5.2%で成長すると予測されています。本レポートでは、薬剤タイプ（非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）、コルヒチン、その他）、流通チャネル（病院薬局、小売薬局、オンライン薬局）、および地域（北米、欧州、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米）別に市場を分析し、各セグメントの価値を米ドルで提供しています。

市場の主要な動向と予測

* 調査期間: 2019年～2030年
* 評価基準年: 2024年
* 予測データ期間: 2025年～2030年
* CAGR: 5.20%
* 最も急速に成長する市場: 北米
* 最大の市場: アジア太平洋
* 市場集中度: 中程度
* 主要企業: アストラゼネカ、バイエルAG、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、武田薬品工業など

市場概要

心膜炎治療薬市場は、COVID-19パンデミックによって大きな影響を受けました。2021年9月にJournal of Cardiovascular Medicineに掲載された「COVID-19患者における心膜炎：系統的レビュー」と題する研究によると、COVID-19患者の心膜炎は他のウイルス性心臓向性感染症と同様の臨床的特徴を示し、NSAIDsとコルヒチンが症例の半数以下で使用されました。また、2021年10月にPubMed.govに掲載された「SARS-CoV-2感染後の心膜炎：Long COVIDのモザイクにおけるもう一つの小石か？」と題する別の研究では、COVID-19と心膜疾患に関して、心膜炎は急性感染期には広く見られるものの、急性期後には稀である一方、軽度の心膜液貯留はCOVID-19の急性期後には非常に一般的であることが示されました。この研究は、心膜炎の発症遅延に基づき、COVID-19後の心膜炎が、ウイルス複製なしに心膜におけるウイルス核酸の持続によって引き起こされる炎症の継続に関連していると結論付けています。その結果、グルココルチコイドは、従来の治療法に反応しない、または不耐性の患者にとって、急性ウイルス感染ではなく心膜の炎症成分を治療するための効果的な選択肢となる可能性があります。これらの研究は、COVID-19患者集団における心膜炎治療薬の使用が増加していることを示しており、市場の成長を後押ししています。

さらに、心血管疾患や心膜炎の有病率の増加、および心膜炎に対する新たな治療法の登場が、市場の成長を牽引すると予想されます。世界保健機関（WHO）の2021年7月の更新情報によると、心血管疾患は世界中で主要な死因であり、冠動脈性心疾患、脳血管疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患などが含まれます。同情報源によれば、世界中で1,790万人が心血管疾患で死亡しており、これは世界の全死亡の約32%に相当します。心膜炎は心臓手術や心臓発作と関連していることが多いため、心血管疾患の高い有病率とそれに伴う死亡が心膜炎治療薬市場の成長を促進すると予想されます。

米国心臓協会が2021年4月に発表したデータによると、心膜炎はあらゆる年齢層の人々に影響を及ぼしますが、16歳から65歳の男性に多く見られます。急性心膜炎の治療を受けた患者の最大30%が再発を経験し、そのうち少数が慢性心膜炎に移行します。また、2021年7月にJournal of American Heart Associationに掲載された「再発性心膜炎における臨床的負担とアンメットニーズに関する米国データベース研究」と題する研究によると、急性心膜炎の年間発生率は人口10万人あたり約27.7人です。最初の発症後、約30%の患者が疾患の再発を経験します。先進国における急性心膜炎の死亡率は約1.1%です。このように、心膜炎の有病率の上昇は、予測期間中の市場成長を促進すると予想されます。

加えて、心膜炎の治療のための新規治療薬を開発するための臨床試験が実施されています。例えば、ClinicalTrials.govの2021年5月の更新情報によると、「再発性心膜炎におけるKPL-914のパイロット研究」と題する第II相開発中の試験では、再発性心膜炎患者におけるKPL-914治療の予備的な有効性と安全性を検討しています。同様に、2021年10月のClinicalTrials.govの更新情報によると、「急性心膜炎の治療におけるデキサメタゾンと非ステロイド性抗炎症薬の比較（Dexa-P）」と題する試験は、急性心膜炎患者におけるNSAIDの代替としてのデキサメタゾンの使用を評価するために第IV相開発中です。このように、主要な市場プレーヤーによる臨床開発活動の増加は、予測期間中に市場を牽引すると予想されます。

しかしながら、心膜炎治療薬に関連する副作用は、予測期間中の市場成長を抑制する可能性があります。

主要な市場トレンドと洞察

非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）セグメントが予測期間中に市場を支配すると予想されます。

薬剤タイプ別では、非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）セグメントが最大の市場シェアを獲得すると予想されています。NSAIDsは、痛みを軽減し、発熱を下げ、血栓を予防し、高用量では炎症を軽減する薬剤クラスを指します。NSAIDsは、プロスタグランジンを産生する体内の酵素をブロックします。プロスタグランジンは、痛みや炎症に関与する天然の脂肪酸の一群です。特発性またはウイルス性心膜炎患者に対するNSAID治療の目標は、症状を軽減することです。これらの薬剤は同様の有効性を示し、患者の約85～90%が治療開始から数日以内に胸痛の緩和を経験します。

2022年4月にExpert Opinion on Pharmacotherapyに掲載された「急性および再発性心膜炎の薬物療法における進歩」と題する研究によると、急性および再発性心膜炎の第一選択治療薬はアスピリンまたは非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）とコルヒチンです。複数回再発する患者には、NACHT、ロイシンリッチリピート、ピリン領域含有タンパク質3（NLRP3）インフラマソーム/インターロイキン-1（IL-1）軸をブロックする薬剤が有益です。このような研究は、予測期間中のセグメントの成長を促進すると予想されます。

さらに、2022年2月にTrends in Cardiovascular Medicineに掲載された「急性および再発性心膜炎に対する薬物療法を評価するランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス」と題する研究によると、成人特発性急性心膜炎患者におけるNSAIDs、インドメタシン、コルヒチン、ステロイド、静脈内免疫グロブリン、免疫調節薬、またはインターロイキン受容体拮抗薬を評価するランダム化比較試験（RCTs）が進行中です。コルヒチンとNSAIDsの併用、およびアナキンラは、急性特発性心膜炎（AIP）の再発予防に有効であることが判明しました。

これらすべての要因が、予測期間中のセグメントの成長を後押しすると予想されます。

北米が市場を支配し、予測期間中もその傾向が続くと予想されます。

北米は、予測期間中に世界の心膜炎治療薬市場の主要なシェアを占めると予想されています。これは、心膜炎を引き起こす心疾患と診断される人々の数が多く、主要な市場プレーヤーの存在、多大な研究開発、および医療費支出に起因しています。さらに、心臓発作に関連する心膜の炎症に対する患者集団の意識の高まりが、北米市場の成長を促進すると予想されます。

疾病対策予防センター（CDC）の2020年9月に更新された記事「心臓病の事実」によると、心臓病は米国における主要な死因です。同情報源はまた、毎年約80万5千人のアメリカ人が心臓発作を起こしていると報告しています。さらに、米国国立衛生統計センターの2020年4月のデータによると、米国における年齢調整後の高血圧の有病率は成人で45.4%、男性で51%、女性で39.7%でした。心膜炎は心臓病と関連していることが多いため、罹患人口の増加がその治療に対する需要を促進し、市場の成長を後押しすると予想されます。

加えて、国内のいくつかの主要な市場プレーヤーは、既存製品と競合するために新しい製品や技術を開発しており、他の企業は市場でトレンドとなっている他の企業を買収したり提携したりしています。例えば、2021年5月には、米国食品医薬品局（FDA）が、心臓を囲む嚢の再発性炎症を引き起こす疾患に対する初の治療薬を承認しました。Arcalyst（リロナセプト）注射は、成人および12歳以上の小児における再発性心膜炎の治療と再発リスクの軽減のためにFDAによって承認されました。2020年7月には、Kiniksa Pharmaceuticals Ltdが、米国食品医薬品局（FDA）が心膜炎（再発性心膜炎を含む）の治療薬としてリロナセプトにオーファンドラッグ指定を付与したと報告しました。リロナセプトは、インターロイキン-1アルファ（IL-1α）およびインターロイキン-1ベータ（IL-1β）シグナル伝達をブロックする、週1回皮下注射する組換え融合タンパク質です。

これらすべての要因が、予測期間中のこの地域の市場成長を後押しすると予想されます。

競争環境

心膜炎治療薬市場は統合されており、中程度の競争があります。主要なプレーヤーは市場の特定のセグメントで地位を確立しています。さらに、企業は新興地域でグローバルプレーヤーや確立されたローカルプレーヤーと競合しています。主要企業は、既存製品と競合するために新しい製品や技術を開発・発売しており、他の企業は市場でトレンドとなっている他の企業を買収したり提携したりしています。主要なプレーヤーには、アストラゼネカ、バイエルAG、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、武田薬品工業などが含まれます。

最近の業界動向

* 2022年5月、Cardiol Therapeuticsは、再発性心膜炎に対するCardiolRxの多施設共同第II相非盲検パイロット研究について、FDAの治験薬申請（IND）承認を発表しました。
* 2021年3月、Kiniksa Pharmaceuticals, Ltd.は、米国食品医薬品局（FDA）が、成人および12歳以上の小児における再発性心膜炎の治療と再発リスクの軽減のために、週1回皮下注射する組換え融合タンパク質であるARCALYST（リロナセプト）を承認したと報告しました。ARCALYSTは、インターロイキン-1アルファ（IL-1α）およびインターロイキン-1ベータ（IL-1β）シグナル伝達をブロックします。

心膜炎治療薬の世界市場に関する本レポートは、心臓を覆う膜である心膜の炎症である心膜炎に焦点を当てています。心膜炎は胸痛や心臓周囲の体液貯留を引き起こし、急性または慢性で発症します。本レポートは、心膜炎治療薬市場の現状と将来の動向を詳細に分析することを目的としています。

調査範囲は、薬剤タイプ（非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）、コルヒチン、その他）、流通チャネル（病院薬局、小売薬局、オンライン薬局）、および地域（北米、欧州、アジア太平洋、中東・アフリカ、南米）別に市場をセグメント化しています。また、世界の主要地域における17カ国の市場規模とトレンドを推定し、各セグメントの市場価値（USD百万）を提供しています。調査は厳格なリサーチ手法に基づいて実施されています。

エグゼクティブサマリーでは、市場の主要な洞察が提供されます。市場の動向としては、心血管疾患および心膜炎の有病率の増加、心膜炎に対する意識の高まりが市場の主要な推進要因となっています。一方で、心膜炎治療薬に関連する副作用が市場の成長を抑制する要因として挙げられています。さらに、ポーターのファイブフォース分析を通じて、新規参入の脅威、買い手/消費者の交渉力、供給者の交渉力、代替製品の脅威、競争の激しさといった側面から市場の競争環境が評価されています。

市場は以下の主要なセグメントに分類されています。
1. 薬剤タイプ別: 非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）、コルヒチン、その他の薬剤が含まれます。
2. 流通チャネル別: 病院薬局、小売薬局、オンライン薬局を通じての販売が分析されています。
3. 地域別: 北米（米国、カナダ、メキシコ）、欧州（ドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン、その他欧州）、アジア太平洋（中国、日本、インド、オーストラリア、韓国、その他アジア太平洋）、中東・アフリカ（GCC、南アフリカ、その他中東・アフリカ）、南米（ブラジル、アルゼンチン、その他南米）の各地域および主要国が詳細に調査されています。

競争環境のセクションでは、主要企業のプロファイルが提供されます。これには、AstraZeneca PLC、Bayer AG、Johnson & Johnson、Pfizer Inc.、Takeda Pharmaceutical Co. Ltd、Kiniksa Pharmaceuticals、Swedish Orphan Biovitrum AB (Sobi)、Cigna、Hikma pharmaceutical、Wockhardt、XYMAS Pharmaceuticalなどが含まれます。これらの企業は、事業概要、財務状況、製品と戦略、最近の動向に基づいて分析されています。市場の機会と将来のトレンドに関するセクションでは、今後の成長が期待される分野や、市場を形成する新たな動向が提示されています。

本レポートの主要な調査結果として、心膜炎治療薬の世界市場は予測期間（2025年～2030年）中に年平均成長率（CAGR）5.2%で成長すると予測されています。主要企業にはKiniksa Pharmaceuticals、Pfizer, Inc.、Bayer AG、Takeda Pharmaceutical Co. Ltd.、AstraZeneca plcなどが挙げられます。地域別では、北米が予測期間中に最も高いCAGRで成長すると推定されており、2025年にはアジア太平洋地域が最大の市場シェアを占めるとされています。本レポートは、2019年から2024年までの過去の市場規模と、2025年から2030年までの市場規模を予測しています。

1. はじめに

• 1.1 調査の前提条件と市場の定義

• 1.2 調査範囲

2. 調査方法

3. エグゼクティブサマリー

4. 市場の動向

• 4.1 市場概要

• 4.2 市場の推進要因
  • 4.2.1 心血管疾患および心膜炎の有病率の増加

  • 4.2.2 心膜炎に関する意識の高まり

• 4.3 市場の阻害要因
  • 4.3.1 心膜炎治療薬に関連する副作用

• 4.4 ポーターの5つの力分析
  • 4.4.1 新規参入者の脅威

  • 4.4.2 買い手/消費者の交渉力

  • 4.4.3 供給者の交渉力

  • 4.4.4 代替品の脅威

  • 4.4.5 競争の激しさ

5. 市場セグメンテーション (金額別市場規模 – 100万米ドル)

• 5.1 薬剤タイプ別
  • 5.1.1 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)

  • 5.1.2 コルヒチン

  • 5.1.3 その他

• 5.2 流通チャネル別
  • 5.2.1 病院薬局

  • 5.2.2 小売薬局

  • 5.2.3 オンライン薬局

• 5.3 地域別
  • 5.3.1 北米

  • 5.3.1.1 米国

  • 5.3.1.2 カナダ

  • 5.3.1.3 メキシコ

  • 5.3.2 ヨーロッパ

  • 5.3.2.1 ドイツ

  • 5.3.2.2 イギリス

  • 5.3.2.3 フランス

  • 5.3.2.4 イタリア

  • 5.3.2.5 スペイン

  • 5.3.2.6 その他のヨーロッパ

  • 5.3.3 アジア太平洋

  • 5.3.3.1 中国

  • 5.3.3.2 日本

  • 5.3.3.3 インド

  • 5.3.3.4 オーストラリア

  • 5.3.3.5 韓国

  • 5.3.3.6 その他のアジア太平洋

  • 5.3.4 中東およびアフリカ

  • 5.3.4.1 GCC

  • 5.3.4.2 南アフリカ

  • 5.3.4.3 その他の中東およびアフリカ

  • 5.3.5 南米

  • 5.3.5.1 ブラジル

  • 5.3.5.2 アルゼンチン

  • 5.3.5.3 その他の南米

6. 競争環境

• 6.1 企業プロファイル
  • 6.1.1 アストラゼネカPLC

  • 6.1.2 バイエルAG

  • 6.1.3 ジョンソン・エンド・ジョンソン

  • 6.1.4 ファイザー株式会社

  • 6.1.5 武田薬品工業株式会社

  • 6.1.6 キニクサ・ファーマシューティカルズ

  • 6.1.7 スウェディッシュ・オーファン・バイオビトラムAB (Sobi)

  • 6.1.8 シグナ

  • 6.1.9 ヒクマ製薬

  • 6.1.10 ウォックハート

  • 6.1.11 XYMAS製薬

• *リストは網羅的ではありません

7. 市場機会と将来のトレンド