除細動器市場規模と展望、2025年～2033年

世界の除細動器市場に関する詳細な市場調査レポートによると、2024年には世界の除細動器市場規模は139億1,000万米ドルと評価されました。その後、2025年の121億1,000万米ドルから2033年には259億7,000万米ドルに成長すると予測されており、予測期間（2025年～2033年）における年平均成長率（CAGR）は7.18%と見込まれています。除細動器は、心室細動、心臓不整脈、無脈性心室頻拍といった生命を脅かす状況において、患者の心臓に治療的な電気ショックを与える医療機器です。除細動治療の一環として心臓に電気を放電することで、心筋を脱分極させ、心臓の正常な電気インパルスを回復させます。これは、突然の心停止の際に、生命を救うための医療機器として、また外部除細動器がパドルや電極パッドを用いて生命を脅かす不整脈を診断し修復するための手段として機能します。

**市場概要と動向**

除細動器市場の拡大は、主に公共アクセス除細動器（PAD）に対する公共および民間の関心の高まりによって推進されています。PADは、一般の人々が緊急時に使用できるように設計された自動体外式除細動器（AED）を指します。また、心停止のリスクが高い高齢者人口の増加、心疾患の発生率の上昇も市場成長に大きく貢献しています。除細動器は、除細動機能だけでなく、心臓をペースメーカーとして動かす機能も備えているものがあります。市場で入手可能な除細動器には、手動式外部除細動器、AED、および着用型除細動器（WCD）などの携帯型除細動器があります。特にAEDは、その高い有効性と使いやすさから、突然の心停止（SCA）の治療に広く利用されており、世界の除細動器市場において非常に大きなシェアを占めています。

しかし、企業に対する価格圧力の高まりが、除細動器市場の成長を抑制する要因の一つとなっています。この市場では、革新的な技術開発と同時に、コスト効率の高い製品提供が求められるという二律背反の課題に直面しています。

**市場成長の推進要因**

除細動器市場の成長を促進する主な要因は多岐にわたります。

1. **心疾患の有病率増加**: 現代社会における過酷な労働環境、座りがちなライフスタイル、タバコやアルコールの摂取増加、薬物乱用などが、あらゆる年齢層で心疾患の有病率を高めています。例えば、2020年1月にInternational Journal of Strokeに発表された「Global epidemiology of atrial fibrillation: an increasing epidemic and public health challenge」という報告書によると、世界の心房細動の有病者数は3,757万4,000人（世界人口の0.51%）に達し、過去20年間で33%増加しました。さらに、2050年までに心房細動の総患者数は60%以上増加する可能性があると予測されており、不整脈の負担増大が予測期間中の市場拡大を後押しすると考えられます。

2. **高齢者人口の増加**: 高齢者人口の増加も業界の強力な推進力です。国連経済社会局の推計によると、世界の65歳以上の人口は2020年の7億2,700万人から2050年には15億人以上に増加する見込みです。また、65歳以上の人口が総人口に占める割合は、2020年の9.3%から2050年には16.0%に上昇すると予測されています。加齢とともに心血管疾患（CVD）などの慢性疾患の発生率が高まるため、除細動器の需要も必然的に増加します。

3. **公共エリアにおけるAEDの設置推進**: 公共の場でのAEDへの関心が高まっていることも、市場の成長に大きく貢献しています。除細動器が命を救う能力に対する認識が高まるにつれて、駅、学校、大学、商業施設、空港、ショッピングモール、レジャーセンターなど、より多くの公共エリアに除細動器が設置されています。これらは公共アクセス除細動器（PAD）として知られ、医療緊急事態が発生した場合に誰でも使用できます。突然の心停止（SCA）発生件数の増加に伴い、多くの国が公共の場所にPADを設置するための措置を講じています。例えば、英国ではAEDのアクセス性と利用可能性を向上させるための法案が起草されており、可決されれば公共の場所への除細動器設置が義務化され、AEDの需要を促進するでしょう。中国でも、2019年以降、観光都市、一級都市、沿岸省を中心にAEDの迅速な配備が進められており、杭州市は空港、鉄道駅、法執行車両、船舶、その他の公共の場所へのAED設置を義務付けた中国初の都市となりました。

**市場の抑制要因**

除細動器市場の成長を妨げるいくつかの課題も存在します。

1. **製品の不具合とリコール**: 除細動器は、バッテリー、ソフトウェア、またはハードウェアの問題により故障する可能性があります。除細動が適切に実行されない場合、治療上の問題や死に至る可能性があります。過去数年間で、衝撃伝達、電気的問題、ハードウェア構成など、デバイスの性能における技術的欠陥が原因で、多くの除細動器がリコールされています。これらの欠陥は、製品性能の低下や患者の死亡につながる可能性があり、市場全体の信頼性に影響を与えます。

2. **サイバーセキュリティの懸念**: 現代の植込み型除細動器は高度化しており、長距離にわたってデータを転送する能力を持っています。米国食品医薬品局（FDA）は、これらのデバイスがハッキングされる可能性について懸念を表明しています。2019年には、Medtronic社が、そのワイヤレステレメトリ機器に暗号化や認証の安全対策がなかったため、FDAのサイバーセキュリティ問題に直面しました。このようなセキュリティ脆弱性は、患者のプライバシーと安全を脅かすだけでなく、医療機関や製造業者に対する信頼を損なう可能性があります。

**市場機会**

除細動器市場には、いくつかの有望な成長機会が存在します。

1. **次世代除細動器の開発**: 次世代除細動器の開発における進歩は、市場の予想を上回る成長を牽引すると期待されています。これらの新しい除細動器は、デバイス関連の問題をより適切に検出し、対処するように設計されており、製品の安全性と有効性を向上させます。

2. **突然の心停止（SCA）に対する早期介入**: SCAは世界で最も一般的な死因の一つであり、生命を脅かす疾患です。早期に介入し、必要に応じて除細動を用いることで、この疾患を効果的に管理できます。この認識の高まりは、除細動器の需要を継続的に押し上げています。

3. **S-ICD（皮下植込み型除細動器）およびMRI対応のICD・CRT-Dの開発**: S-ICD（皮下植込み型除細動器）やMRI対応のICD（植込み型除細動器）およびCRT-D（心臓再同期療法除細動器）の開発も、予測期間中に市場に大きな成長機会をもたらすと期待されています。S-ICDは経静脈リードを必要としないため、リード関連の合併症リスクを低減します。また、ICDやCRT-Dを装着している患者にとって、MRI検査は診断上不可欠な場合がありますが、従来のデバイスでは制限がありました。MRI対応デバイスの登場は、これらの患者の医療アクセスを大幅に改善し、市場の拡大に貢献します。

**セグメント分析**

**製品タイプ別**: 世界市場は、植込み型除細動器（ICD）と外部除細動器（ED）に大別されます。

* **植込み型除細動器（ICD）**: 2021年には、ICDが市場シェアの72%以上を占め、業界の標準となっています。このセグメントの成長は、心血管疾患の有病率上昇、主要経済圏における高齢者人口の多さ、および主要企業による製品アップグレードの拡大が主な要因です。例えば、2020年にはMedtronic社がMRI対応のClaria CRT-Dデバイスの継続的な採用と市場拡大を報告しました。また、同社のCrome & CobaltポートフォリオのCRT-DおよびICDも大幅な成長を示しました。Boston Scientific社は2020年に、Resonate、Autogen、Dynagen、Incepta、CognisなどのCRT-D製品ラインから全世界で約33,000台を販売し、そのうち16,500台が米国のみで登録されたことは、その高い採用率を示しています。

* **外部除細動器（ED）**: 外部除細動器セグメントは、予測期間中に9.29%と最も高い成長率を示すと予想されています。これは、技術開発の進展と、公共の場所での自動体外式除細動器（AED）へのアクセスを促進するプログラムによるものです。AEDは、世界的な外部除細動器市場を現在リードしており、心不全患者による使用の増加と一般市民への普及拡大により、今後最も急速に成長すると予測されています。着用型除細動器市場に次いで、手動式除細動器が外部除細動器市場で2番目に大きな市場を占めています。

**エンドユース別**: 世界市場は、病院、病院前、公共アクセス市場、代替医療市場、在宅医療にセグメント化されます。

* **病院**: 2021年には、病院セグメントが総収益の75%以上を占め、最大の収益シェアを保持しました。これは、病院で治療される心臓患者数の増加、および病院環境で行われる外科手術数の増加によるものです。突然の心停止の患者治療において、植込み型除細動器（ICD）と体外式除細動器（外部除細動器）が病院でより一般的に使用されています。例えば、Boston Scientific社は2021年1月時点で、全世界で約65万9,000台のICDが流通していると報告しており、2020年1月時点の60万台から5万9,000台増加していることから、かなりの需要があることを示しています。

* **公共アクセス市場**: 公共アクセス市場セグメントは、予測期間中に9.58%と最も速い成長率を記録すると予測されています。これは、突然の心停止イベントへの対応時間改善、人員訓練、およびAEDの公共アクセス利用可能性を高めるためのイニシアチブの増加によるものです。2020年1月にGlobal Timesに掲載された記事によると、中国の様々な観光都市、一級都市、沿岸省は2019年以降、AEDの迅速な配備を開始しました。さらに、杭州市は、空港、鉄道駅、法執行車両、船舶、その他の公共の場所への自動体外式除細動器（AED）の設置を義務付けた中国初の都市となりました。米国、カナダ、イタリア、日本、オーストラリア、中国を含む多くの主要市場では、すでに公共の除細動器へのアクセスを促進するための有利な規制政策や官民の保健機関によるイニシアチブが存在しています。

**地域分析**

* **北米**: 2021年には、北米が総収益の40%以上を占め、最高の収益シェアを保持しました。北米市場の拡大は、米国とカナダにおける有利な法規制、主要企業によるイニシアチブ、および技術的に進んだ医療施設など、いくつかの要因に起因しています。例えば、Boston Scientific社は2020年に、Resonate、Autogen、Dynagen、Incepta、CognisといったCRT-D製品ラインから約33,000台を販売したと述べており、そのうち16,500台が米国のみで登録されたことは、高い採用率を示しています。米国疾病対策センター（CDC）の2021年9月の報告によると、米国では毎年約65万9,000人が心臓病で死亡し、約80万5,000人が心臓発作を起こしており、そのうち60万5,000人が初めての心臓発作、20万人が再発性の心臓発作を経験しています。この高い心臓発作の発生率は、米国における市場拡大を後押しすると予測されています。カナダでは、心血管疾患の有病率増加、研究開発への投資増加、除細動器に関する国民の意識レベル向上により、除細動器市場が経済全体よりも速いペースで成長すると予測されています。

* **アジア太平洋**: 予測期間中、アジア太平洋地域は7.88%と最も高い年平均成長率（CAGR）で拡大すると予想されています。これは、医療インフラの進歩、多数の患者、および心血管疾患の発生率に起因します。除細動器の高い普及率と支援的な法規制により、日本市場が地域拡大の最前線に立っています。実際、日本の市場リーダーである日本光電は、2020年に手動式外部除細動器で6万6,000米ドル以上の売上を記録しています。

このレポートは、医療機器業界で4年以上の経験を持つリサーチアナリスト、ジェイ・メータ氏によって作成されました。彼は市場規模の測定、技術評価、競合分析を専門とし、製造業者、投資家、医療提供者がデバイスの革新、規制環境、および世界中の新たな市場機会を理解するのに役立つ研究を提供しています。

Report Coverage & Structure

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