塩化ナトリウム市場の規模とシェア分析 ― 成長動向と2025年～2030年の予測
塩化ナトリウム市場レポートは、グレード（岩塩、天日塩、真空塩）、用途（化学品製造、除氷、水処理、農業、食品加工、医薬品、およびその他の用途）、および地域（アジア太平洋、北米、欧州、南米、中東およびアフリカ）別に分類されます。本レポートでは、上記すべてのセグメントについて、数量（キロトン）ベースでの市場規模と予測を提供します。
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塩化ナトリウム市場の概要
塩化ナトリウム市場は、2025年には2億4,162万トンと推定され、2030年には3億837万トンに達し、予測期間（2025年～2030年）中に5%を超える年間平均成長率（CAGR）で成長すると予測されています。
2020年のCOVID-19パンデミックは、建設活動の一時的な停止や世界的な化学品製造施設の閉鎖により、市場に悪影響を及ぼしました。しかし、市場は回復し、予測期間中も同様の成長を続けると見込まれています。
市場拡大の主な推進要因としては、食品・飲料産業における塩化ナトリウムの需要増加、および北米とヨーロッパにおける医薬品グレードの塩化ナトリウムの需要が挙げられます。一方で、防腐剤や凍結防止剤として利用できる改良された特性を持つ代替化学品の出現が、市場の成長を抑制する可能性があります。将来の市場成長には、ナトリウムベースバッテリーの利用拡大やクロルアルカリ製品の生産が様々な機会を提供すると期待されています。
地域別に見ると、アジア太平洋地域が市場を支配しており、北米は予測期間中に急速な成長を遂げると予測されています。
主要な市場動向
化学品生産部門が市場を牽引
塩化ナトリウムは、有機化学品、無機化学品、塩素、ソーダ灰、苛性ソーダなどのクロルアルカリ化合物を含む多くの化学品の生産に利用されています。これらの材料は、ポリ塩化ビニル（PVC）、洗剤、ガラス、染料、石鹸など、様々な製品の製造に使用されます。
炭酸ナトリウム（ソーダ灰）は、洗剤製造や冶金産業に加え、リン酸塩、ケイ酸塩、ガラスなどの重化学品の製造にも使用されます。ソルベー法では、安価で広く入手可能な石灰石と塩化ナトリウムが利用され、アンモニアと二酸化炭素によって塩と石灰石が炭酸ナトリウムに変換されます。
2023年上半期には、EU-27諸国、ノルウェー、スイス、英国で約362万8,468トンの塩素が生産されましたが、これは2022年上半期と比較して19.4%の減少でした。しかし、2023年9月には、2022年9月と比較して塩素生産量が2%増加しました。報告によると、生産された塩素の大部分はPVC、EDC/VCM用途（約31.6%）に、次いでイソシアネートおよび酸素化合物（30.8%）、無機化学品（12.7%）に使用されました。
米国国勢調査局によると、2023年の建設支出額は1兆9,787億ドルで、2022年の1兆8,487億ドルを7%上回りました。これにより、PVC製品や硬質フォーム断熱パネルなどのポリウレタンベースの建設資材の需要が高まりました。
さらに、苛性ソーダは木材を木材パルプに変換するクラフトプロセスで使用され、これは依然として製紙の主要な方法です。クロルアルカリ産業レビューによると、2023年9月までにEU-27諸国、ノルウェー、スイス、英国で242万2,500キロトンの苛性ソーダが生産され、有機化学品がその大部分を占めました。
これらの要因に基づき、化学品生産部門は今後数年間で市場を支配すると予想されています。
アジア太平洋地域が市場を支配
アジア太平洋地域は、化学産業からの需要増加により、世界の市場シェアを支配しています。中国は化学品加工の中心地であり、世界の化学品生産の大部分を占めています。中国国家統計局によると、同国は3,900万トン以上の水酸化ナトリウムを生産しており、これは化学品製造、水処理、金属加工、家庭用洗剤などに使用されています。
Invest Indiaの統計によると、インドの主要化学品生産量は2023-24年度（2023年8月まで）に535.4万トンに減少しましたが、2022-2023年度の同時期には543.2万トンでした。しかし、2023年8月までの有機化学品生産量は、前年同期と比較して4.52%増加しました。
塩化ナトリウムは、医薬品産業の様々な用途でも使用されています。API（原薬）や、透析液、輸液、注射剤、生理食塩水点滴、経口補水塩などの製品の製造に利用されます。
India Brand Equity Foundation（IBEF）によると、インドの医薬品産業は2030年までに約1,300億ドルに達すると予想されています。同国は世界最大のワクチン生産国であり、世界のワクチン総生産量の約60%を占めています。さらに、医薬品生産量では世界第3位にランクされています。
塩化ナトリウム市場に関連する様々な分野での需要が絶えず増加していることから、アジア太平洋地域が市場を支配すると予想されています。
競争環境
塩化ナトリウム市場は、上位企業によって統合されています。主要なプレーヤー（順不同）には、Nouryon、Cargill Incorporated、Wacker Chemie AG、INEOS、Tata Chemicals Europeなどが含まれます。
最近の業界動向
* 2024年1月： リオ・ティントが68%の株式を保有するオーストラリアの塩会社Dampier Saltは、3つの生産拠点の1つであるレイク・マクラウド（Lake MacLeod）サイトを、オーストラリアのLeichhardt Industrials Groupに2億5,100万ドルで売却すると発表しました。
* 2022年1月： B. Braunは、フロリダ州の医薬品製造工場についてFDAの許可を取得しました。B. Braun Medicalのデイトナビーチ製造工場では、注射用0.9%塩化ナトリウムを生産し、ペンシルベニア州ベスレヘムから1,000mlおよび500mlのExcel Plus IVバッグで提供される予定です。
* 2022年1月： Nouryonは、ユーカリパルプ生産会社Suzanoと15年間の契約を締結しました。Nouryonは、ブラジルのリバス・ド・リオ・パルドにあるSuzanoの新しいパルプ工場からの再生可能電力を使用して、持続可能な統合製造モデルで塩素酸ナトリウムを生産する予定です。
本レポートは、「世界の塩化ナトリウム市場」に関する包括的な分析を提供しています。塩化ナトリウムは地球上で最も豊富に存在する鉱物の一つであり、主に海水や地下の岩塩層から採掘されます。これは化学産業における重要な塩素源として広く利用されています。
本調査は、市場の仮定、調査範囲、調査方法、エグゼクティブサマリー、市場ダイナミクス、市場セグメンテーション、競争環境、および市場機会と将来のトレンドといった主要な章で構成されています。特に、市場の全体像を把握するための「レポートスコープ」では、塩化ナトリウムの主要な供給源とその化学産業における役割が強調されています。
市場は、グレード別（岩塩、天日塩、真空塩）、用途別（化学品製造、融雪剤、水処理、農業、食品加工、医薬品、その他用途）、および地理別（アジア太平洋、北米、ヨーロッパ、南米、中東およびアフリカの主要地域にわたる27カ国）に詳細にセグメント化されており、各セグメントの市場規模と予測は容量（キロトン）で示されています。その他用途には、プラスチック製造や製紙などが含まれます。
塩化ナトリウム市場は、2024年には2億2,954万トンと推定されており、2025年には2億4,162万トンに達すると予測されています。さらに、2030年までには年平均成長率（CAGR）5%以上で成長し、3億837万トンに達すると見込まれています。
市場の成長を促進する主な要因としては、食品・飲料産業からの塩化ナトリウム需要の継続的な増加が挙げられます。特に、北米およびヨーロッパ地域における医薬品グレードの塩化ナトリウムに対する需要の拡大も、市場を牽引する重要な要素となっています。
一方で、市場の成長を抑制する要因としては、防腐剤や融雪剤として利用可能な多数の代替化学物質の出現が挙げられます。本レポートでは、業界のバリューチェーン分析やポーターのファイブフォース分析を通じて、市場の競争環境と構造を深く掘り下げ、サプライヤーや消費者の交渉力、新規参入の脅威、代替製品・サービスの脅威、競争の程度などを分析しています。
地理的分析では、2025年にはアジア太平洋地域が塩化ナトリウム市場において最大の市場シェアを占めると予測されています。また、北米地域は予測期間（2025年～2030年）において最も高いCAGRで成長すると推定されており、その動向が注目されます。
競争環境の章では、Nouryon、Cargill, Incorporated、Wacker Chemie AG、Tata Chemicals Europe、INEOSといった主要な市場プレイヤーが特定されています。これらの企業は、合併・買収、合弁事業、提携、および市場シェア分析を通じて、市場での地位を確立するための戦略を展開しています。
将来の市場機会とトレンドとしては、ナトリウムベースバッテリーの利用拡大や、クロールアルカリ製品の生産増加が挙げられます。これらの動向は、塩化ナトリウム市場に新たな成長機会をもたらし、今後の市場発展に大きく寄与すると期待されています。
1. はじめに
- 1.1 調査の前提条件
- 1.2 調査範囲
2. 調査方法
3. エグゼクティブサマリー
4. 市場の動向
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4.1 推進要因
- 4.1.1 食品・飲料産業からの塩化ナトリウム需要の増加
- 4.1.2 北米およびヨーロッパにおける医薬品グレード塩化ナトリウム需要の増加
-
4.2 阻害要因
- 4.2.1 防腐剤および融雪剤として利用できる多数の代替化学物質の出現
- 4.2.2 その他の阻害要因
- 4.3 産業バリューチェーン分析
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4.4 ポーターの5つの力分析
- 4.4.1 供給者の交渉力
- 4.4.2 消費者の交渉力
- 4.4.3 新規参入の脅威
- 4.4.4 代替製品およびサービスの脅威
- 4.4.5 競争の程度
5. 市場セグメンテーション（数量ベースの市場規模）
-
5.1 グレード
- 5.1.1 岩塩
- 5.1.2 天日塩
- 5.1.3 真空塩
-
5.2 用途
- 5.2.1 化学品製造
- 5.2.2 除氷
- 5.2.3 水処理
- 5.2.4 農業
- 5.2.5 食品加工
- 5.2.6 医薬品
- 5.2.7 その他の用途
-
5.3 地域
- 5.3.1 アジア太平洋
- 5.3.1.1 中国
- 5.3.1.2 インド
- 5.3.1.3 日本
- 5.3.1.4 韓国
- 5.3.1.5 ベトナム
- 5.3.1.6 マレーシア
- 5.3.1.7 インドネシア
- 5.3.1.8 タイ
- 5.3.1.9 その他のアジア太平洋地域
- 5.3.2 北米
- 5.3.2.1 米国
- 5.3.2.2 カナダ
- 5.3.2.3 メキシコ
- 5.3.3 欧州
- 5.3.3.1 ドイツ
- 5.3.3.2 英国
- 5.3.3.3 イタリア
- 5.3.3.4 フランス
- 5.3.3.5 ロシア
- 5.3.3.6 トルコ
- 5.3.3.7 イタリア
- 5.3.3.8 北欧
- 5.3.3.9 その他の欧州地域
- 5.3.4 南米
- 5.3.4.1 ブラジル
- 5.3.4.2 アルゼンチン
- 5.3.4.3 コロンビア
- 5.3.4.4 その他の南米地域
- 5.3.5 中東およびアフリカ
- 5.3.5.1 サウジアラビア
- 5.3.5.2 南アフリカ
- 5.3.5.3 カタール
- 5.3.5.4 ナイジェリア
- 5.3.5.5 アラブ首長国連邦
- 5.3.5.6 エジプト
- 5.3.5.7 その他の中東およびアフリカ地域
6. 競争環境
- 6.1 合併と買収、合弁事業、提携、および契約
- 6.2 市場シェア (%)/ランキング分析
- 6.3 主要プレーヤーが採用した戦略
-
6.4 企業プロファイル
- 6.4.1 Cargill, Incorporated.
- 6.4.2 CK Life Sciences Int’l. (Holdings) Inc.
- 6.4.3 Compass Minerals
- 6.4.4 INEOS
- 6.4.5 K+S Aktiengesellschaft
- 6.4.6 Nouryon
- 6.4.7 Pon Pure Chemicals Group
- 6.4.8 Rio Tinto
- 6.4.9 Südwestdeutsche Salzwerke AG
- 6.4.10 Swiss Salt Works AG
- 6.4.11 Tata Chemicals Europe
- 6.4.12 Wacker Chemie AG
- *リストは網羅的ではありません
7. 市場機会と将来のトレンド
- 7.1 ナトリウムベースバッテリーの使用増加
- 7.2 クロルアルカリ製品の生産増加
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塩化ナトリウムは、化学式NaClで表される無機化合物であり、一般に「食塩」として広く知られております。ナトリウムイオンと塩化物イオンがイオン結合によって結びついた白色の結晶性固体で、水に非常に溶けやすく、特有の塩味を持つことが特徴です。地球上には海水や岩塩として豊富に存在し、生命活動にとって不可欠なミネラルの一つでもあります。その物理的・化学的安定性から、古くから人類の生活と産業に深く関わってまいりました。
塩化ナトリウムには、その用途や精製度、採取源によって様々な種類がございます。食品用途では、精製度が高く不純物が少ない「精製塩」が一般的ですが、ミネラル分を多く含む「粗塩」や、海水から作られる「海塩」、地層から採掘される「岩塩」、湖水から得られる「湖塩」など、風味や成分に特徴を持つ多様な食塩が流通しております。これらは粒子の大きさや結晶の形状も異なり、料理の用途に応じて使い分けられています。工業用途では、純度や粒度が特定の規格に適合する「工業用塩」が用いられ、食品用とは異なる基準で生産・供給されております。また、医療分野では、体液の浸透圧に近い濃度に調整された「生理食塩水」として、点滴や洗浄液などに利用されております。その他、道路の凍結防止に用いられる融雪剤や、水処理における軟水化剤など、多岐にわたる形態で利用されております。
その用途は非常に広範にわたります。最も身近なのは食品分野であり、調味料として料理の味付けに不可欠であるだけでなく、漬物や塩蔵品、加工肉などの保存料としても重要な役割を担っております。また、パンやチーズ、味噌、醤油といった発酵食品の製造においても、微生物の活動を制御し、風味を形成する上で欠かせない存在です。化学工業においては、塩化ナトリウムは最も基本的な原料の一つであり、電気分解によって苛性ソーダ（水酸化ナトリウム）、塩素、水素を製造する「電解ソーダ工業」の中核を成しております。これらの製品は、紙・パルプ、繊維、プラスチック、洗剤、医薬品など、あらゆる産業の基盤となる化学品です。さらに、ソーダ灰（炭酸ナトリウム）の製造にも用いられ、ガラスや洗剤の原料となります。医療分野では前述の生理食塩水の他、うがい薬や点眼薬の成分としても利用されます。水処理の分野では、イオン交換樹脂の再生剤として硬水軟化に用いられたり、海水淡水化プラントにおける濃縮塩水の処理にも関連します。農業分野では、土壌改良剤や飼料添加物として、また皮革加工、染料、セラミックス、金属精錬など、数えきれないほどの産業でその特性が活用されております。
塩化ナトリウムに関連する技術も多岐にわたります。製塩技術は、天日製塩法、煎熬（せんごう）法、イオン交換膜法など、地域や時代によって様々な方法が開発されてきました。特に日本では、海水から効率的に塩を製造するために、イオン交換膜法が主流となっております。これは、イオン交換膜を用いて海水中のナトリウムイオンと塩化物イオンを選択的に濃縮し、その後蒸発させることで高純度の塩を得る技術です。電解ソーダ工業では、塩化ナトリウム水溶液の電気分解により、苛性ソーダ、塩素、水素を同時に生産する技術が確立されており、現代の化学産業を支える重要なプロセスです。また、海水淡水化技術、特に逆浸透膜（RO膜）法では、海水を淡水と濃縮塩水に分離する過程で、塩化ナトリウムが濃縮された副産物が生じます。この濃縮塩水からさらに有用な資源を回収する技術開発も進められております。食品加工においては、塩蔵技術や発酵技術が古くから伝承され、現代の食品科学においてもその原理が応用されております。
市場背景を見ると、塩化ナトリウムは世界中で年間数億トン規模で生産されており、その大部分は工業用として消費されております。主要な生産国は中国、米国、インド、ドイツなどで、豊富な岩塩鉱床や広大な天日製塩に適した土地を持つ国々が上位を占めております。需要の約7割は化学工業向けであり、特に電解ソーダ工業の動向が市場に大きな影響を与えます。食品用としての需要は比較的安定しておりますが、人口増加や食文化の変化によって緩やかに変動します。価格は、製塩プロセスにおけるエネルギーコスト（特に蒸発工程）、輸送コスト、そして需給バランスによって左右されます。地域によっては、岩塩の採掘コストと海塩の製造コスト、さらには輸入関税などが価格形成に影響を与えることもございます。世界経済の成長に伴い、化学品需要が増加すれば、塩化ナトリウムの市場も拡大する傾向にあります。
将来展望としては、塩化ナトリウムは今後も人類の生活と産業にとって不可欠な物質であり続けるでしょう。持続可能性への意識の高まりから、製塩プロセスのエネルギー効率化や環境負荷低減に向けた技術開発がさらに進むと予想されます。例えば、再生可能エネルギーを利用した製塩や、副産物の有効活用などが挙げられます。また、電解ソーダ工業においては、より省エネルギーで環境に優しい新技術の開発が期待されております。海水淡水化技術の進展に伴い、濃縮塩水からの塩化ナトリウムやその他の有用なミネラル資源の回収技術も重要性を増すでしょう。食品分野では、健康志向の高まりから減塩トレンドが続く一方で、塩化ナトリウム以外の代替塩や、塩味を増強する技術の開発が進むと考えられます。新興国の工業化や人口増加は、工業用および食品用塩化ナトリウムの需要を押し上げる要因となるでしょう。さらに、CO2回収・利用技術との連携や、新たな素材開発における触媒・反応媒体としての利用など、これまでとは異なる分野での応用可能性も探求されていくことが期待されます。塩化ナトリウムは、その普遍性と多様性から、今後も様々な技術革新と産業発展の基盤であり続けるでしょう。