手術器具市場規模と展望、2024年～2032年

世界の手術器具市場は、2023年に247.7億米ドルの規模に達しました。この市場は、予測期間（2024年から2032年）において年平均成長率（CAGR）9.31%で成長し、2032年には551.9億米ドルに達すると予測されています。この成長は、外科医による腹腔鏡器具、電気手術器具、内視鏡、手術用レーザーといった専門的な手術器具への嗜好の高まりによって支えられています。これらの特殊な手術器具は、整形外科、神経外科、心血管外科、眼科など、多様な外科専門分野のニーズに応えるものです。

**手術器具の定義と役割**

手術器具とは、広範な研究開発を通じて開発され、医療専門家が特定の外科手術中に患者の内部器官や生物学的組織にアクセスし、操作するのを支援するために設計された医療機器の総称です。これには、手動器具、電気手術器具、閉鎖器具など、多種多様なデバイスが含まれます。これらの器具は、股関節や膝関節の置換術、帝王切開、胆嚢摘出術、ヘルニア修復術、泌尿器疾患の治療など、幅広い外科処置で不可欠な役割を果たします。近年では、ロボット支援手術の利用が増加していること、また眼科、胃、腸の問題を抱えやすい高齢者人口が増加していることも、手術器具の需要を後押ししています。ロボット支援手術は、外科医がより高い制御性、アクセス性、精度で低侵襲手術を行うことを可能にします。今後、手術器具の研究開発は、市場に新たな機会をもたらすと期待されています。

**市場の推進要因**

世界の手術器具市場の成長を牽引する主な要因は多岐にわたります。

1. **慢性疾患の罹患率増加：** がん、関節炎、心血管疾患といった慢性疾患の発生率が増加しています。これらの疾患は、多くの場合、外科的介入を必要とし、手術器具の需要を直接的に押し上げています。
2. **世界的な高齢化人口の増加：** 世界保健機関（WHO）によると、2019年には65歳以上の人口が7億300万人に達しました。高齢者は、加齢に伴う慢性疾患（がん、関節炎、心血管疾患など）に罹患するリスクが高く、結果として手術を受ける機会が増加します。アメリカ退職者協会（AARP）の報告によれば、高齢患者は入院手術の40%以上、外来手術の33%を占めています。この人口動態の変化は、今後数年間の市場拡大に大きく貢献すると見られています。
3. **低侵襲手術への意識向上：** 患者の間で低侵襲手術の利点、特に早期外科的介入による経済的利益に対する認識が高まっています。これにより、手術件数が増加し、特殊な手術器具の需要が加速しています。
4. **医療インフラへの政府投資と新興国での外国直接投資（FDI）促進：** 各国の政府は、医療インフラの整備に多額の投資を行っており、新興国ではFDIを奨励する規制が導入されています。これにより、医療施設の拡充と手術件数の増加が促され、手術器具市場の成長を支援しています。
5. **外傷の増加：** スポーツ外傷、交通事故、心臓疾患などによる負傷の発生率が増加しています。WHOは、2019年には心血管疾患が世界の全死亡の32%を占めたと推定しています。心血管疾患の発生率の上昇は、手術器具の需要を増加させる主要な要因です。また、The Orthopedic Journal of Sports Medicineの報告によると、中国のスポーツ選手はアメリカの選手よりも負傷する可能性が高いとされており、スポーツ外傷の増加も手術器具の需要を高めています。
6. **手術器具の技術革新と業界投資：** 手術器具の継続的な開発と、それに対する業界からの投資増加は、近い将来、市場に新たな成長機会をもたらすと予測されています。医療提供者は、常に最先端の手術器具の導入を求めています。

**市場の阻害要因**

一方で、手術器具市場の成長を妨げるいくつかの課題も存在します。

1. **手術器具の汚染リスク：** 手術器具の汚染は、市場にとって大きな課題です。わずかな細菌の存在でも、高い感染症発生率につながる可能性があります。滅菌が不十分な場合、手術器具は感染源となり、手術部位感染（SSI）を引き起こすリスクがあります。
2. **偽造手術器具の販売：** 偽造手術器具の流通は、市場の成長に対するもう一つの阻害要因です。これらの製品は品質や安全性の基準を満たしておらず、患者の健康を危険にさらし、市場の信頼性を損なう可能性があります。
3. **COVID-19パンデミックの影響：** パンデミックによるロックダウンは、交通事故の減少、手術件数の削減、サプライチェーンの混乱を引き起こし、一時的に市場の成長を抑制しました。しかし、パンデミックが収束するにつれて、延期された手術のバックログが蓄積し、その後の需要増につながっています。

**市場の機会**

手術器具市場には、今後大きな成長をもたらす機会が数多く存在します。

1. **手術器具の研究開発（R&D）：** 新しい手術器具の開発は、予測期間を通じて新たな市場機会を提供します。これにより、より効率的で安全な手術が可能になり、未開拓の医療ニーズに対応できます。
2. **外科用縫合糸およびステープラーの需要増加：** 外科用縫合糸およびステープラーの需要の高まりは、世界の手術器具業界における医療技術企業およびOEMにとって、重要な収益機会を生み出しています。
3. **競争力のある価格戦略と最先端技術の採用：** 主要企業は、競争力のある価格戦略と最先端技術を組み合わせることで、製品の販売を促進し、市場シェアを拡大しています。
4. **ハンドヘルドツールの利用増加：** 病院を中心とした医療施設では、ハンドヘルドツールの使用が増加傾向にあります。これにより、新しいレトラクターやダイレーターの開発が市場に大きな収益増加をもたらしています。
5. **手術機会のための画像診断製品の改善：** 手術におけるより優れた画像診断製品の開発は、世界市場に大きく貢献すると期待されています。例えば、2020年5月には、拡張現実メガネの開発企業であるOcutrx Vision Technologies, LLCが、外科手術用のOcutrx OR-Bot Surgery Visualization Theatreを発表しました。
6. **縫合糸市場における技術進歩と政府の取り組み：** 縫合糸市場では、技術的な改善と政府の支援が成長を後押ししています。2021年6月には、NICE（英国国立医療技術評価機構）が、Ethicon, Inc.製のPlus suturesをNHS（国民保健サービス）での手術に使用することを推奨する新しい医療技術ガイダンスを発行しました。この縫合糸は、抗菌保護を提供する唯一の縫合糸であり、手術部位感染の予防に不可欠な措置とされています。

**セグメント分析**

**1. 製品タイプ別**

* **外科用縫合糸およびステープラー：** 2021年には市場収益の42%以上を占め、最大のセグメントでした。これは、創傷閉鎖手術における縫合糸とステープラーの使用が増加し、その採用率が向上していることに起因します。特にステープラーは、感染リスクが低く、創傷治癒が速いという利点から、市場を新たな高みへと押し上げると予想されます。前述のEthiconの抗菌縫合糸の例のように、技術革新と政府の取り組みが、予測期間中の縫合糸市場の拡大をさらに促進するでしょう。
* **電気手術器具：** 予測期間中、最も急速に成長するセグメントとなることが期待されています。これは、低侵襲手術におけるこれらの器具の需要が増加しているためです。Medtronicのような企業は、先進的な電気手術器具の開発に注力しています。
* **ハンドヘルド手術器具：** 2021年にはかなりの収益シェアを占め、健全な成長率で拡大すると予測されています。このセグメントには、鉗子、ヘラ、レトラクター、ダイレーター、グリッパー、切開器具など、一般的に使用される補助器具が含まれます。コスト削減と交差汚染のリスク低減という利点から、使い捨て器具の人気が高まっています。

**2. 外科的専門分野別**

* **その他：** 2021年には総収益の約30%を占めました。
* **産婦人科：** 2021年には2番目に大きな収益シェアを占めました。これは、世界的な出産数の増加と、女性生殖器疾患の罹患率の上昇に起因します。米国疾病対策センター（CDC）によると、2020年には米国で1,148,692件の帝王切開手術が行われました。
* **形成外科および再建外科：** この市場で最も急速な成長が期待されるセグメントです。可処分所得の増加、技術進歩、美的改善への欲求の高まり、エンターテイメント業界で外見への注意がますます求められるようになったことなどが、市場の拡大を牽引すると予測されています。
* **神経外科、創傷閉鎖、心血管外科、整形外科：** これらの分野も市場の重要な部分を占めています。特に、高齢化人口の増加は、整形外科および心血管外科手術の総数を増加させると予測されています。

**3. エンドユーザー別**

* **病院：** 病院セグメントは、手術器具市場のエンドユーザー別で最も優位な地位を占めています。これは、これらの施設で実施される手術の範囲が広範であることと、先進的な手術技術への多大な投資を行っているためです。他のエンドユーザーと比較して、病院はより複雑で多様な外科処置を多数実施するため、幅広い手術器具を必要とします。また、病院はより潤沢な資金と強固なインフラストラクチャを備えているため、最新の手術技術を導入・統合し、患者のアウトカムと運用効率を向上させることができます。
* **外来手術センター（ASC）、診療所、その他：** これらの施設も手術器具の需要に貢献していますが、規模と複雑さの点で病院には及びません。

**4. 地域別分析**

* **北米：** 2021年には35.0%以上の最大の収益シェアを維持しました。この地域の市場拡大は、高い医療費、確立された病院の存在、米国に拠点を置く大手企業の存在、技術開発、および低侵襲手術への需要の増加といった複数の要因によって推進されています。予測期間を通じて、これらの要因が地域市場の主要な推進力となると予想されます。
* **アジア太平洋：** 予測期間中、最も高い成長率を示す地域市場となると予測されています。インドや中国などの国々における可処分所得水準の上昇は、形成外科および再建外科分野の拡大に貢献し、ひいては地域市場全体の成長を促進すると期待されています。また、この地域における高齢者人口の割合の増加は、整形外科および心血管手術の総件数を増加させると見られています。COVID-19パンデミックは、2020年と2021年前半にアジア諸国の経済に大きな悪影響を与えましたが、市場はパンデミック2年目にはすでに回復を開始していました。パンデミックにより、手術の膨大なバックログと延期が生じ、その結果、この地域における手術器具の需要がますます高まっています。

**結論**

世界の手術器具市場は、慢性疾患の増加、高齢化社会の進展、医療技術の革新、および低侵襲手術への意識向上といった複数の要因に後押しされ、今後も堅調な成長を続けると予測されます。製品の汚染リスクや偽造品の流通といった課題はあるものの、研究開発の進展、新たな画像診断技術の導入、および特定の外科専門分野における需要の高まりが、市場に豊かな機会を提供しています。特に、北米は引き続き市場を牽引し、アジア太平洋地域は最も急速な成長を遂げる地域となるでしょう。

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        • 脳神経外科
          • 金額別
        • 形成外科 & 再建外科
          • 金額別
        • 創傷閉鎖
          • 金額別
        • 産婦人科
          • 金額別
        • 心臓血管
          • 金額別
        • 整形外科
          • 金額別
        • その他
          • 金額別
      • 使用法別
        • 概要
        • 使用法別金額
        • 再利用可能
          • 金額別
        • 使い捨て
          • 金額別
      • 最終使用者別
        • 概要
        • 最終使用者別金額
        • 病院
          • 金額別
        • 外来手術センター（ASC）
          • 金額別
        • クリニック
          • 金額別
        • その他
          • 金額別
    • トルコ
    • サウジアラビア
    • 南アフリカ
    • エジプト
    • ナイジェリア
    • その他の中東およびアフリカ
  • ラテンアメリカ市場分析
    • 概要
    • 製品別
      • 概要
      • 製品別金額
      • 手術用縫合糸 & ステープラー
        • 金額別
      • ハンドヘルド手術器具
        • 金額別
      • 電気手術器具
        • 金額別
      • その他
        • 金額別
    • 用途別
      • 概要
      • 用途別金額
      • 脳神経外科
        • 金額別
      • 形成外科 & 再建外科
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      • 創傷閉鎖
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      • 産婦人科
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      • 概要
      • 使用法別金額
      • 再利用可能
        • 金額別
      • 使い捨て
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    • 最終使用者別
      • 概要
      • 最終使用者別金額
      • 病院
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      • 外来手術センター（ASC）
        • 金額別
      • クリニック
        • 金額別
      • その他
        • 金額別
    • ブラジル
      • 製品別
        • 概要
        • 製品別金額
        • 手術用縫合糸 & ステープラー
          • 金額別
        • ハンドヘルド手術器具
          • 金額別
        • 電気手術器具
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        • その他
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        • クリニック
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        • その他
          • 金額別
    • メキシコ
    • アルゼンチン
    • チリ
    • コロンビア
    • その他のラテンアメリカ
  • 競合状況
    • プレイヤー別手術器具市場シェア
    • M&A契約と提携分析
  • 市場プレイヤー評価
    • Stryker Corporation
      • 概要
      • 事業情報
      • 売上
      • 平均販売価格 (ASP)
      • SWOT分析
      • 最近の動向
    • Alcon Laboratories Inc.
    • Smith & Nephew plc
    • Zimmer Biomet Holdings Inc.
    • Ethicon Inc.
    • COVIDIEN
    • KARL STORZ & Co.
    • Becton, Dickinson and Company
    • Braun Melsungen AG
    • Medtronic Inc.
    • Aspen Surgical Products, Inc.
    • Integra LifeSciences Corporation
    • CONMED Corporation
    • MEDICON
    • Synergetics USA, Inc.
  • 調査方法
    • 調査データ
    • 二次データ
      • 主要な二次情報源
      • 二次情報源からの主要データ
    • 一次データ
      • 一次情報源からの主要データ
      • 一次情報の内訳
    • 二次および一次調査
      • 主要な業界インサイト
    • 市場規模推定
      • ボトムアップアプローチ
      • トップダウンアプローチ
      • 市場予測
    • 調査の前提
      • 前提
    • 制限事項
    • リスク評価
  • 付録
    • 議論ガイド
    • カスタマイズオプション
    • 関連レポート
  • 免責事項

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